ゴールデンウィークが終わりましたね。お仕事だった方はお疲れさまでした。そのおかげで連休を楽しめた方も多かったと思います。お休みだった方も、休み明けで気持がなかなか上がらない方もいるのではないでしょうか。
さて、この時期は以下のような要因で、疲れが身体や気持に出やすい時期です。
疲れを蓄積しすぎないように、前回の「春はうつ病に要注意!?」
も是非参考にしてみて下さい。
本日はうつ病と間違われやすい「双極性障害」を紹介したいと思います。双極性障害は、躁うつ病とも呼ばれ、字のごとく「躁:気分が高揚する」状態と「うつ:気分が落ち込む」状態を繰り返すことが特徴とされます。アメリカ精神医学会の精神障害診断マニュアル「DSM-5」では、うつ病(単極性うつ病)と双極性障害(躁うつ病)を異なる別の精神疾患単位と見なしています。そのため、従来使われていた、うつ病と双極性障害を一つにまとめた『気分障害(Mood Disorder)』という総称的な精神疾患の概念がなくなりました。DSM-5では『双極性及び関連障害(Bipolar and Related Disorders)』と『抑うつ障害・うつ病性障害(Depressive Disorders)』と明確に区別がされています。
躁の症状とは次のようなものがあげられます。症状によっては、学業や仕事、人間関係や社会生活に支障をきたすようなトラブルにつながる場合も少なくありません。
以上のような症状が、3つ以上当てはまり、日中のほとんどの時間に存在するような日が4日以上継続し、他者から見ても明らかで、トラブルにつながりそうな場合は要注意です。
DSM-5では『双極性及び関連障害(Bipolar and Related Disorders)』として、7つの精神疾患の診断基準が含まれていますが、ここでは双極性障害の?型と?型の2つの分類についてご紹介します。
?型は、躁の状態とうつの状態の違いが大きく、躁の時とうつの時の違いが比較的明確と言われています。先述のように活動的な様子なので、元気なのかと思っていると、急に気分が落ち込んだり、やる気がなくなったりうつの症状が現れます。ただ、両者の違いが極端なので、よく気づきやすいと言われています。複数の症状がほぼ一日中存在している状況が1週間以上続き、人間関係や日々の生活に支障が出るような状況でしたら要注意です。
?型の特徴は、躁の状態が?型に比べて軽い「軽躁」であるのが特徴です。うつの症状とあわせて、躁の症状がみられるのですが、1日中症状が存在しているわけでもなく、例えば、入院するなどの強制ストップをかけるような手段が必要なほどでもなく、とはいっても、もともとのその人とは違った高揚した様子や過活動な様子が見られます。なので、一見すると「テンションが高い」「元気だ」「活動的だ」と思われる程度で、いわゆる元気になった状態ととらえられ、自分でも、周囲からも「躁」の部分が発見されづらくなります。
?型、?型のいずれにしても「活動的な症状」というのは、「元気=良いこと=回復」と取られ、受診をした際にも、患者さんが医師にあえて伝えないことや「最近は元気です、調子がいいです」という形で報告がされます。また、躁の時よりもうつの状態の期間が長く出る方も多く、診察時に気持が落ち込んだ時の状態を中心に話すことが多いので、「うつ病」の診断のみになるケースが少なくはありません。特に?型はうつ病と勘違いされやすいですが、うつ病と双極性障害は治療方法が異なります。うつ病の治療を始めたことで、症状が悪くなる場合などもあるので、いかに軽躁状態を見逃さないかがカギとなります。
元気であるという受けとめ方が悪いわけではありませんが、気持が落ち込む時だけではなく、元気だと感じているときや活動的になっているときも含めて、自分の状態を俯瞰して眺めるような意識を大切にしてみてください。
精神疾患の全般に言えることでもあるのですが、双極性障害の明確な原因ははっきりとわかっていません。ストレスがきっかけとなることもありますが、ストレスをためやすい人だけが発症するわけではありません。「自分はうつになんかならない性格です」と口にする方も少なくはありませんが、どんな性格の人でも発症する可能性は備えています。普段の自分と何か違う感じをしたときには、自分自身のこの週間程度の様子を振り返ったり、近しい人に客観的な意見を聞いてみたりするのも有効な手段です。
双極性障害は正しく治療をうければ改善できる病気です。ただ、うつ病よりも治療が難しく、長期化する傾向があります。治療は薬物療法が中心となることも多いですが、カウンセリングなども有効とされます。適切な治療を行うことで症状を軽減することが可能なので、焦り過ぎずに、治療をしつつ、症状との付き合い方などを考えてみてください。
薬物治療としては、躁やうつの波を小さくしてくれる「気分安定薬」や、イライラを沈めたり気持を穏やかにする「抗精神病薬」を中心に行うことが多いです。症状が見えにくいことなどもあるので、自己判断で中断したり減薬したりせずに、医師と相談をしながら治療を続けてみて下さい。
双極性障害の症状は、一見すると「元気」とみられることもありますが、活動的な様子や自信満々な様子に対して、周囲から疎ましがられることも時にあります。そうすると、本人と周囲の受け止め方にギャップが生まれたり、誤解から関係性が悪くなったりしてしまうことがあります。さらには、その原因を性格ととらえられ、病気と思われず、本人も苦しんでいる場合がよく見られます。本人にしろ、周囲にしろ、その状況の中には「困っている人がいる」ということは共通しているので、一人で抱え込まずに相談してみて下さい。
NPO法人日本オンラインカウンセリング協会 理事 中村洸太(臨床心理士)