悩んでいる状態というのは、
うまくいっていないことに意識が向いている状態、にすぎないのかもしれません。
同僚からねたまれて足を引っ張られる、
親に愛されなかったことで傷ついた、
子どもが反抗的、
お金が足りない、
仕事が苦痛……
わたしたちは様々なことを悩みますが、「問題」を解決すれば悩みが解決する、と信じています。
だからみんな、一生懸命「問題解決」しようとします。
ですが、今のわたしは、カウンセリングで問題解決にはフォーカスしません。
自分の体験から、「悩み」や「後悔」が本当に起こす厄介なことは、
問題そのものではないなぁと思うようになったからです。
肉親との離別、複雑な親子関係、いじめ……
わたしの過去は、「トラウマの宝庫」といっても過言ではないくらい、
問題だらけでした。
だからわたし自身いろんなセラピーで問題をひとつずつ解決していきました。
ですがそのうち、過去世までさかのぼっていろいろ問題が出てきたのでした。
わたしがその「問題解決」のスパイラルを抜け出すことができたのは、
ある時期に何人もの方から同じパターンのご相談をいただいたことがきっかけでした。
ある女性は、過去に親から愛されなかったことで、
パートナーを信頼することができず、パートナーとの関係に不安を抱えていました。
彼から連絡が来ないと心配になってしまって、しつこく電話して嫌われてしまった過去があり、
とにかく電話しないようにしようと、過去の親子関係を癒すことに集中していました。
彼女をみていると、ほとんどのエネルギーを、「悩み」に集中させていました。
たとえば、友人とお茶を飲みにいくとか、趣味の時間をもつとか、
仕事を目一杯するとか、問題から離れるための活動のエネルギーは全部、
「うまくいっていない親子関係」に向けられています。
もともとうまくいっていないわけですから、そんな親に向き合おうとすると疲れてしまい、
イライラしてとても楽しそうには見えませんでした。
だからどうしても機嫌が悪くなってしまい、不安定になって、
ちょっとしたことで傷ついてしまったりして、彼との関係がおろそかになっていたのです。
そうしてまた、彼との関係がうまくいかないのは、親子関係が原因なのだ、
という思いを強くして、ますます親子関係の修復という問題解決をがんばろうとします。
結局その彼との関係がうまくいかなくなり、またつらい体験を増やしてしまうのです。
「彼との関係がおろそかになってるよ」
外からみているとそれははっきりわかりました。
もちろん、親子関係によってパートナーシップのイメージは影響をうけますから、
今の彼との関係に影響があることは事実です。
でも、今、せっかくある彼との関係をケアできていないと、
彼との関係も早晩うまくいかなくなってしまいます。
過去はもう過ぎ去って手元にないのに、
心が過去にあり続けて、今にいない。
だから「今」がうまくいかなくなってしまう……
そのとき、はっきりわかったのでした。
目の前の人は自分のかがみ、とはよくいったもので、
彼女たちは、
結婚がうまくいかないのは親のせいと思って、結婚生活にコミットしきれていなかった
昔の自分そのものでした。
わたしたちは、たとえば、
「あのとき○○していれば」と悔やむことがたくさんあります。
人間の本能といっていいくらい、わたしたちはその性質をもっています。
進化とは、後悔によって起こされるものだからかもしれません。
でも「あのとき○○していれば」と後悔するとき、
わたしたちの意識は、「現実には存在していない」過去に向かい、
今に向けられるべき意識がおろそかになっています。
それは「今」に完全にコミットできていないということ。
つまり、「今」実力を発揮しきれていないということで、
それは、新たなる「後悔の種」を生み出す結果になるということです。
「今」の完全性は、わたしたちの意識がここに100%向けられているときにだけ存在します。
あらたな後悔をつくらないために。
「意識を今に向けていきたい」
わたしは自分が後悔を感じるたびにそう思いだすのです。