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臨床心理士が語る「逃げるは恥だが役に立つ」
2016/11/08 生活

新垣結衣さん、野源さん出演のTBS火曜ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が好調です。

 

海野つなみさんの漫画が原作で、「逃げ恥」なんて略称で人気を博しています。

 

 

あらすじ-wikipediaより-

 

大学院を出ながらも就職難で派遣社員になった森山みくりは、いわゆる派遣切りに遭い、無職の身となってしまう。

 

求職中の娘を見かねた父は、家事代行サービスを利用していた元部下・津崎平匡が折りよく代行の会社を替えようとしていたところを頼み込んで、週1回の仕事を取り付けてくる。

 

気難しい性格で、あまり他人に構われることを好まない津崎だったが、みくりとは適度な距離感を保って良好な関係を築く。

 

だが、定年を機に田舎へ引っ越すという願望を両親が叶えることになり、現状を維持したいみくりは津崎に「就職としての結婚」を持ちかけ、その提案にメリットを感じた津崎は了承し、2人は契約結婚という道を選ぶ。

 

 

ちなみに、主人公の森山さんは臨床心理士の資格を持っています。積極的に臨床心理士になったのではなく、成り行きの中で資格を取得したようですが、それなりに意欲をもって試験に臨んだ挙句に一度不合格になっている私としてはなかなか心中穏やかではありません。

 

「自分の戦う場所を選べ」

 

印象的なタイトルですが、これはハンガリー語のことわざで「Szégyen a futás, de hasznos」

 

という言葉らしいです。

 

私はハンガリーの言葉はさっぱりわかりませんが、聞いたところには「自分の戦う場所を選べ」という意味だそうです。

 

決められた土俵から降りることは、「逃げ」や「恥」のように思われるかもしれないが、生きていく上ではとても大切なことだというメッセージが込められているように感じます。

 

 

逃げるは恥か?

 

1971年に出版された“「甘え」の構造”で有名な土居健郎氏によれば、日本人は身内にベタベタ甘えるものに限って、他人に対しては傍若無人・冷酷無比の態度に出ることが多いとされます。

 

つまり、日本人はムラ社会の意識が比較的強く、その集団の中にいる分には構わないが、集団から外れたものに対しては容赦がない雰囲気があるとも考えられます。

 

例えば、不登校。学校に行かない理由は様々でしょうが、「合わない」ということも非常に重要な理由ではないでしょうか。しかし、その集団になじめないで学校という集団の足並みから外れる人はどこか「落第者」のような印象を持たれがちです。

 

 

男性が女性の約2倍自殺している国

 

警察庁の「平成26年中の自殺の状況の報告によれば、男性の自殺者は17,386人(68.4%)、女性の自殺者は8,041人(31.6%)と男性は女性の約2倍の数値である。その要因は様々だとは思いますが、ひとつに男性は基本的に強がりで、自分のストレスに対して少し鈍感だったり、自分の感情よりも「しなくてはいけないこと」を優先したりする傾向があるように感じます。

 

要はついつい頑張りすぎてしまうということです。

 

 

地味にスゴイ!らしさの呪縛

 

これは「男性が」というよりは旧時代的な「社会から求められる男らしさ」という、実際の男女性には関係のない「呪縛的」なものと思われます。

 

実際、そうではない男性や、女性でも同様の呪縛に縛られている人が少なくはありません。

 

自殺を考えたことがある人達の中には、「弱音なんて吐くのは情けない。

 

できない自分が悪い」と自分を責める人が一定数存在します。

 

こういう方は、上司の悪口くらいならいうことができても、本当に辛かったりすることは周りに言えない傾向があるようです。

 

 

「うちの街、自殺しないんで」

 

自殺の問題は深刻で、なんとか改善しようと国も実は結構頑張っています。

 

「自殺者が少ない地域はどこだろう」「その地域にはどんな特徴が・・」

 

そんな想いで調査をしたところ、全国3318市区町村の中で、全国で一番自殺率が低い地域が徳島県海部町(現:海陽町)だということがわかりました。

 

これは過去30年間の平均値で、この17年間で老人の自殺がゼロだそうです。

 

この海部町の特徴を調査した本が岡檀さんの「生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある」です。

 

 

海部町から学ぶ「生きるコツ」

 

・人間関係は緩やかなつながりくらいがちょうどいい

・悩みごとを話したり、助けを求めたりするのは恥ずかしくない

・他人は他人、自分は自分

 

簡単にまとめると、自分のペースや価値観を大切にしながら、困ったら助けを求められるような、ほどよい人間関係の中で生きていくことが、死にたくなりにくいということですね。

 

 

戻るは恥だが役に立つ

 

さて、ここで「逃げ恥」の話に戻ってみましょう。

 

「逃げる」という言葉には、どこかネガティブな印象が付いて回ります。

 

そして、皆が足並みを揃えているところから離脱することは「恥ずかしい落第者である」とされる雰囲気がどこかに存在し、何より逃げた本人が一番その想いに苦しんでいることも少なくありません。

 

 

8回逃げればこっちのもの

 

しかし、「その場を離れる」ことには、その場の感情に巻き込まれないように冷静になる効果もありますし、名作「ドラゴンクエスト?」のFC版では、ボス戦で8回逃げると会心の一撃が出るようになります。

 

つまり、逃げることは必ずしも悪いことではなく、これから先をよくしていくために有効な戦略ともなり得るのです。

 

逃げるは恥ではないし、役にも立つ

 

逃げないことに美徳を置いて、命をすり減らしていくことが得策だとはあまり思いません。

 

同じようにエネルギーを消費していくのであれば、無理をしないで自分がしんどくないペースで、自分のやり方を大切にしながら、柵がないような人間関係の中で助け合いながら生きていく方法を考えて行くことにエネルギーを使っていくのもひとつではないでしょうか。

 

 

先ほどの海部町のコツをすべて取り入れる必要もありません。

 

自分が出来そうな要素を考えてみて、少しずつ、でも、着実にいい方向に向かっていくことを考えてみませんか。

 

NPO法人日本オンラインカウンセリング協会   理事 中村洸太(臨床心理士)

 

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